日: 2025年3月18日

2025年3月18日(火)-7 花粉情報

さて、ここまでのお話から、飛散花粉数のみでは、我々医師は局地のことしか判断できません。患者様の行動範範囲は思いの外広く、行き先も千差万別です。これらを全てカバーするには地点毎の情報では、不足です。広範な計測結果を、天気図の様な方法で、作ることは出来ないものか、と思いあぐねます。そこで、日本における観測地点について、大まかですが、調べました。一応、これでほぼ網羅したと考えられる地方別の結果です。

北海道(落下法7ヶ所、ポーレンロボ37ヶ所:計44ヶ所)

地点 飛散開始日 地点 飛散開始日
28北海道札幌市  -1 測定中 28同広尾 po
28同函館市 測定中 28枝幸 po
28同岩見沢市 準備中 28音威子府 po
28同旭川市 準備中 28同名寄 po
28同稚内市 準備中 28同羽幌 po
28同帯広 準備中 28同士別 po
28同北見 準備中 28同留萠 po
28同雅内     -2 po 28同旭川 po
28同旭川 po 28同富良野 po
28同網走 po    
28同北見 po    
28同根室 po    
28同釧路 po    
28同帯広 po    
28同札幌 po    
28同小樽 po    
28同室蘭 po    
28同函館 po    
28同深川 po    
28同滝川 po    
28同岩見沢 po    
28同夕張 po    
28同江別 po    
28同千歳 po    
28同寿都 po    
28同江差 po    
28同長万部 po    
28同登別 po    
28同苫小牧 po    
28同浦河 po    
28同紋別 po    
28同遠軽 po    
28同中標津 po    
28同足寄 po    
28同池田 po    

1 北海道立衛生研究所 2 ウェザーニュース

北海道はスギ、ヒノキは少ないようですが将来に備えて観測は行なっているようです。ネットで簡単に調べただけで、44ヶ所もの測定地点があることがわかりました。これらの情報を合わせて分析すれば、花粉の流れが分析でき、治療に新たな展開が開けるように思われます。花粉観測は花粉症の診療において、担当医師の医療行為の基礎であり、観測値を見れば患者の皆さんの症状をある程度計ることもできます。また、花粉症治療に用いられる薬剤を重複して用いなくともよくなります。つまり、花粉症治療の根幹です。これが実現しますと大幅な医療費削減につながります。私が大まかに計算したところ、削減額は数十億円にのぼります。さて、これだけ多くの方が関わっているのに、またこれほど医療に役立つのに、これほど医療費の削減ができるのに、つまり飛散花粉の観測は、花粉症治療上の根本あるいは治療の命脈とも考えられます。花粉観測に対して、なぜ医療保険の適応はできないのでしょうか?これまで誰もこの点を主張なかったのでしょうか?今後、多くの医師が関わらないといけないのでしょうか?花粉観測は、医師でなくとも、検査技師、看護師あるいは事務担当の方でも、少し訓練と講義を受ければ、どなたにもできると思います。ただし、担当者が安心して仕事ができるように、身分と収入の保証が必要と考えます。現状を見ますと、これらのことは今後の花粉症医療において、急務と考えられます。花粉情報協会さんには、こうした養成プログラム作成と講習会を開催することを強く求めたいと思います。

この調査は、まだ終わっていません。判明次第加筆します。

 


2025年3月18日(火)-6 花粉情報

飛散開始日、本格飛散開始日(20個/cm2以上になった日)

飛散開始日 積算400℃

到達日

本格飛散

開始日

最大飛散日 同年飛散総
H26(2014) 2月03日 2月07日 3月04日 3月21日 1993.4
H27(2015) 2月11日 2月10日 2月23日 3月10日 2938.1
H28(2016) 2月14日 2月08日 2月21日 3月09日 4184.6
H29(2017) 2月16日 2月06日 2月17日 3月07日 2570.7
H30(2018) 2月10日 2月12日 2月24日 3月04日 8057.4
H31(2019) 2月12日 2月07日 2月20日 3月22日 6199.4
R2(2020) 2月05日 2月05日 2月13日 2月23日 2841.6
R3(2021) 2月11日 2月06日 2月14日 2月23日 4567.3
R4(2022) 2月26日 2月12日 2月27日 3月16日 5172
R5(2023) 2月12日 2月08日 2月18日 3月02日 7862.7
R6(2024) 2月13日 2月11日 2月15日 3月02日 6300.2
R7(2025) 2月16日 2月04日 2月27日    

今年は、積算温度400℃に達したのは、2月4日で、2001年以来最も早く到達しました。ところが、その後

寒波が来て、その影響で気温が下がり、しかも寒波は結構ながく日本に止まり、飛散開始は比較的遅い16日になりました。最大飛散日は、もうしばらく先と思われます。


2025年3月18日(火)-5 花粉情報

兼子 順男先生(保谷市東伏見)からも観測値をいただきました。やはり、飛散量が当地とは大きく違うようです。

過去のデータの分析では、当地に飛来する花粉は、群馬や埼玉で放出された花粉が、北風に乗って都下を横切り、多摩川に沿って飛散する流路(人工衛星の画像から)があるようです。13、14日保谷市に近い練馬はまさに北風でした。今年、当地はこのルートから外れているようです。

ダーラム型(個/cm2)

3   天気 スギ花粉 ヒノキ花粉
1 86.6 0.0
2 221.3 0.0
3 雨雪 138.3 0.0
4 曇雨雪 38.3 0.0
5 1.0 0.0
6 679.0 0.0
7 149.6 2.3
8 曇雨雪 28.0 0.3
9 16.6 0.3
10 37.3 8.3
11 曇雨 41.3 6.6
12 曇雨 9.6 6.3
13 833.3 26.0
14 655.3 228.3
15 126.6 17.3

2月16日飛散開始。飛散開始後、大小はありますが、多くの飛散が続いています。

保谷市では、ヒノキ花粉の飛散が始まったようです。ヒノキ花粉は、アレルギーの原因となる構成する淡白が、主な2種は共通していますが、他の1種はスギと異なることが判明しています。また、新たな抗原性を持つ淡白が見つかっています。


2025年3月18日(火)-4 花粉情報

2月下旬からスギ花粉の飛散が始まり、すでに3月も16日になりました。昨年同期のスギ花粉は、佐橋 紀男先生や兼子 順男先生のところと当地で飛散数が、ほぼ同じ傾向で推移しましたが、今年は大きく異なっています。例えば、3月1日から8日の飛散数は、富里市3045.5個/cm2、保谷市1342.1/cm個に対して、当地は、僅か526.9個/cm2富里の17.3%、保谷の39.3&に過ぎません。この相違は、花粉放出源の違いの他に、気象条件とりわけ風速、風向の影響と考え、調べてみました。

富里市:ダーラム型(個/cm2)

3月 スギ ヒノキ イチイ属 ハンノキ属 シデ属 マツ属 イネ科 スゲ属 その他
1 532.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
2 1221.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
3 155.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
4 250.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
5 34.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
6 489.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
7 266.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
8 96.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

 

富里市:ロータリー型

3月 スギ ヒノキ イチイ属 ハンノキ属 シデ属 マツ属3) イネ科 スゲ属 その他
1 834.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
2 1886.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
3 124.1 0.0 0.0 0.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
4 249.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
5 49.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
6 454.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
7 575.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
8 117.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

 

昨年同期には、3地区とも、ほとんどの日が北寄りの風でした。今年同期も、保谷市、富里ともに北風、ところが当地は、昨年は北風が多く、今年は南寄りの風が多いという天候でした。当地にはスギ花粉の発生源は少なく、前項の結果は、当地に飛来する花粉を運ぶ風向がことなるため、発生源が昨年と今年で違ったようです。つまり、当地は海(東京湾)からの風で、海には花粉発生源はないという事と考えられます。


2025年3月18日(火)-3 花粉情報

2月の測定数とシーズンの総数の関係(2016年以後)

2月の測定数とシーズンの総数の関係(2001年以後)は下表の通りです。

年 度 ス  ギ ヒ ノ キ そ の 他 スギ・ヒノキ

総飛散数

2016年 473.8 2.1 21.6 4184.6
2017年 389.7 0.3 22.9 2570.7
2018年 341.3 3.3 12.8 8057.4
2019年 811.2 0.0 20.6 6199.4
2020年 1412.0 0.0 23.4 2841.6
2021年 445.7 3.0 27.5 4567.3
2022年 57.3 0.0 10.0 5172.0
2023年 1129.3 16.5 27.7 7862.7
2024年 900.6 5.6 33.9 6300.2
2025年 65.4 0.0 14.8

2月は、主にスギ花粉が飛散、ヒノキはほとんど観測されず、その他の花粉も少ない傾向にあります。今年は2022年(57.3個/cm2)に次いで少数でした。2月に襲来した強い寒波が影響したようです。2月少数すなわち総数が少ないと言うわけでもありません。3月は要注意です。さて当地は、3月の上旬は、スギ花粉も比較的おだやかに飛散しており、患者の皆さんの症状も酷い方はいませんでした。とはいえ、これからピークに向かう可能性もまありすので、油断しないでください。


2025年3月18日(火)-2 花粉情報

3月も前半が過ぎました。例年は、3月前半に観測数が大きく、3月全体の半数を超えること

が多い傾向にありました。

3月前半(1〜15日)のスギ花粉飛散状況

総飛散数 3月前半

(3/1〜3/15)

比率=3月前半/総飛散数
5000.5 1704.0 34.1
1491.3 1107.7 74.3
9625.2 4022.3 41.8
1971.2 1106.6 56.1
6407.3 5472.0 85.5
1299.8 469.0 36.1
2694.1 1520.4 56.4
3479.1 1988.0 57.1
2273.5 908.8 40.0
4162.0 3161.6 76.0
4867.8 2540.6 52.2
2466.7 897.4 36.6
3913.2 1751.4 44.8
3838.8 1863.9 47.9
6636.5 4860.2 73.2
5271.0 1800.0 34.1

全調査日数:120日(うるう年:121日)  3月前半は調査全期間の12.5% この3月前半の2週間に飛散総数の34〜85%のスギ花粉が飛散します。昨年は平成21年以来、平成21年と並んで最も比率の低い年でした。

 


2025年3月18日(火)-1 花粉情報

保谷市東伏見は、スギ花粉が大量に飛散しているようです。13日から3日続けて極めて多くの花粉が記録されています。3日間合計で、スギ花粉1615.1個/cm2、ヒノキ花粉271.6個/cm2、合計1886.7個/cm2にもなりました。当地のスギ花粉観測数の推移が、今シーズンは、例年とやや傾向が違っていることは、既に3月2日に皆様にお伝えしました。当地では、この3日間に観測されたスギ、ヒノキ花粉は149.4個/cm2でしたので、保谷市の僅か7.9%でした。

この結果が何故もたらされたか、疑問に思って以後私なりに分析してみました。3月上旬の風向が昨年とは異なることが原因ではないかと考えました。前回の検討では、保谷市は北風、当地では南風でした。当地の南は東京湾ですから、スギ花粉の飛散は少ない計算になります。今回、当地は149.4個/cm2でしたが、保谷市の兼子耳鼻科ではなんと1615.1個/cm2、さらにヒノキ花粉が149.4個/cm2も観測されました。早速気象データを調べました。すると、前回2日から3日は、当地は南南東から北北西の風(2.2m/s)でした。一方、保谷市に近い練馬では1日中北北西の風2.3m/sでした。やはり、風それも風向きの影響のようでした。

さて、今回当地は、北西〜北北西の風が2.2〜3.3m/sでした。一方、保谷に近い練馬では、北風2.6〜3.3m/sでしたので、保谷市の方がより北風の影響を受けたものと推測されます。

こうした分析も詳細な測定結果があって、はじめて可能になります。自動計測機にはそれなりの精度が求められます。