日: 2024年10月7日

2024年10月7日-6 花粉情報

40年ほど前ですが、某薬剤の臨床試験を依頼され、治験に際して、大きな疑問が生じました。その疑問とは、この薬を開発した某国製薬会社の説明文の全てに「本剤は予防的効果が望める」と記載されていました。しかし、日本はおろか諸外国の論文を調べてもアレルギーにこの薬を予め投与して効果を確認したと記載された論文は発見できませんでした。疑問を残したまま10年が経ち、その後同じような効果を謳う薬剤が次々に開発されました。そこで、どうしても予防的効果を臨床的に確かめたくなり、有症期が明確でしかも増加が著しいスギ花粉症を対象疾患として試験を試みれば、効果を確認できるであろうと考えました。効果を的確に確認するには花粉の飛散状況を定量的に明らかにする必要がありますので、昭和59年(1984)から飛散花粉(主にスギ花粉)の観測を初め、観測が的確にでき、観測結果に自身が得られた翌年から作用機序の異なる3剤の臨床試験に着手しました。すなわち、DSCG点鼻薬(耳鼻展望30、補2、1987)、ヒスタグロビン(耳鼻展望29、補6:1986)、ヒスタグロビンネビュライザー(耳鼻展望29、補6:1986)、ケトチフェン(耳鼻展望30、補2:1987)でした。それぞれ効果を確認できました。さらに塩酸エピナスチン(耳鼻展望38、6:1995)においても同様の効果を認めました。これらが、初期療法を考える契機となり、第6回日本鼻科学会ランチョンセミナー(1997)において「スギ花粉症の初期療法―計画立案から実践まで」を発表する機会を得て、今日実践している初期療法が完成しました。初期療法は、単なる早期介入とは、全く異なる治療です。


2024年10月7日-5 花粉情報

東京都福祉保健局の花粉情報:東京アレルギー情報nabの過去の観測データによりますと例年10月の半ばを過ぎますと、都心ではイネ科花粉を除いてほぼ飛散が終了。むしろ、スギ花粉が少数ですが観測されています。冬の気候になると室内塵アレルギーの抗原も減少して、室内塵アレルギーの方の症状も安定します。そこで、この時期からは来春の花粉症対策を行うことが可能です。スギ・ヒノキ花粉が飛散する前に予め行っておく対策を私共は、花粉症の初期療法と呼んでいます。この療法を成功させるには、私共と患者の皆さんが協力して行わなければなりませんので、ぜひ患者の皆さんご協力ください。花粉飛散が始まる前に、正しく診断して、合併症や併発症を治し、十分な免疫力を養っておくことが肝要です。


2024年10月7日-4 花粉情報

秋は春ほどではありませんが、春に次いで寒暖差の大きな季節です。温度差はアレルギーの原因にはなりませんが、アレルギー症状を悪化させます。衣類、冷暖房を適切に用いるなど温度調節が大切です。これから冬に向かって気温が下がりますが、気温の低下とともに大気の乾燥が進みます。東京は国内で一番冬に乾燥が激しい都市です。暖房によっても室内の乾燥が進みます。乾燥はそれだけでも粘膜にダメージを与えます。住居内が過剰に乾燥しないようにご注意ください。


2024年10月7日-3 花粉情報

9月3日から5日の3日間は日差しも短く(16.1時間)、気温が低く(平均25.7℃)、比較的過ごしやすい日々でした。6日以後、晴れて再び暑くなり、平均気温は28.0℃を超え、最高気温は33℃を超える暑さが続いています。9月としては、記録的高温で、18日は歴史上最も遅い夏日だったそうです。

 

 

気温(2023年) 気温(2024年)
平均 平均
日平均 日最高 日最低 日平均 日最高 日最低
6 23.2 27.6 19.6 23.1 27.7 19.3
7 28.7 33.9 24.7 28.7 33.5 25.0
8 29.2 34.3 26.1 29.0 33.6 25.7
9 26.7 31.2 23.6 26.6 30.9 23.5
10 18.9 23.7 14.7      

また、今年の9月は「観測史上最も暑い9月」だったようです(TVのニュース)。しかし、東京は

「6〜9月で比較すると昨年の方が暑く、花粉の成長は昨年の方が良かったのではないか」とも考えられます。また、この夏の気象条件が来春のスギ、ヒノキ花粉の飛散量に、どのような影響があるのか、未経験の暑さで、定かではありません。

  2022年 2023年 2024年
日照時間 全天日射量 日照時間 全天日射量 日照時間 全天日射量
6 167.6 17.4 137.5 16.3 158.1 17.4
7 176.4 17.3 250.4 21.6 199.6 18.5
8 150.4 15.4 222.3 19.0 198.8 17.4
9 143.7 13.9 143.7 13.9 160.8 13.9

日照時間、日射量は上の表のとおりです。今後の花芽調査の結果が待たれますし、ご注目下さい。


2024年10月7日-2 花粉情報

天候が昨年までと大きく変化しています。

  気温
天気 平均 最高 最低
27 雨時々曇り 23.3 24.8 22.4
28 曇り 24.0 27.4 21.8
29 曇り時々雨 22.6 25.0 21.3
30 曇り時々雨のち晴 22.7 25.3 20.5
1 曇り〜雨〜晴れ 23.3 26.6 20.1
2 曇り〜晴れ一時雨 26.5 31.9 22.0
3 曇り時々雨 23.1 25.4 21.6
4 曇り一時雨 25.9 30.4 22.3
5 雨一時曇り 21.3 24.5 18.9
6   21.3 22.9 19.1

「9月は観測史上最も暑い9月」だったようです(TVニュース)。2日は9月22日以来の30.0℃超えでした。


2024年10月7日-1 花粉情報

佐橋 紀男先生(NPO法人花粉情報協会)から、「2024年のスギ花粉前線〜スギ・ヒノキ花粉飛散動態―:日本花粉学会誌70巻1号をお送りいただきました。この論文は、1986年以来毎年発表され、今年で39年目となる極めて有用かつ他に例を見ない貴重な論文です。花粉症は、花粉が原因のアレルギー性疾患ですから、花粉の飛散や動態を知るということは、花粉症治療の根幹、基礎と言っても過言ではない重要なことです。

さて、前述の佐橋 紀男先生の報告によりますと、78の測定点の内、耳鼻咽喉科医が担当しているのは、僅かに28地点、35.8%に過ぎません。東京都でも、城北と城南では飛散数が異なります。また、都心と青梅では、6306.0個/cm2の品川に対して、青梅は15765個/cm2、つまり青梅は、品川の2.5倍にもなります。全国で78地点のデータしかないとすると、あまりにも少ないと言わざるを得ません。耳鼻咽喉科の医師の皆さんが花粉観測に参加をしていただきたいと思います。また、ご参加を切にお願い申し上げます。最後に、私の希望ですが、花粉観測は花粉症治療の基礎です、立派に医療保険の対象として相応しいと考えられます。医療保険の給付を受けられます様、お取り計らいのほど、関係各位に心からお願い申し上げます。

給付がなく、このまま測定者が減少すると、花粉情報が得られないばかりか、私共は根拠のない医療を続けなければならないことになります。