2024年08月13日-1 花粉情報
花粉の観測は、ある薬剤の花粉症に対する効果を臨床試験によって評価してほしいと製薬会社から依頼され、必要に駆られて始めました。引き受けるからには、学問的にも臨床的にも適切な方法で実施しようと考えました。しかし、その時期(卒後5年)花粉症に対する試験手法すらありませんでした。そこで、第1歩が花粉観測でした。対象が花粉症の場合、花粉の飛散数が明確でなければ、症例の吸入量も不明で、薬剤の的確な評価はできません。そこで、先ず花粉観測方法の検討から開始しました。簡便で誤差の小さな方法でなければ、継続して実施することすらできませんので、ダーラム法(落下法)を用い、観測条件が一定でなければ、薬剤の評価に役立たないと考え、ダーラム型花粉捕集器は、自宅3階屋上に設置しました。設置位置は40年以上変えていません。測定時間も30年以上午後11時にプレパラートの交換と決めていました。ここ数年体力の衰えから交換時刻を午後11時から10時に変更しました。私自身の能力を高め、測定精度を一定にするため、2年(2シーズン)は試験シーズンに費やしました。さて、始終存在して持続的に症状のある通年性アレルギーであれば、従来のように薬剤を投与して、どれだけ症状が抑えられるかを評価すれば良いのですが、花粉症の場合は花粉が飛散していない季節には症状がなく・花粉飛散期に吸入された花粉数に応じて悪化します。そこで、花粉飛散期前から薬剤を投与して飛散期の症状がどれだけ抑えられるかを客観的に評価する方法をとりました。つまり、花粉飛散期前から薬剤を投与(半数は偽薬)、その薬剤によって飛散期の症状悪化がどれだけ防止できるかを群間比較して評価する試験としました。花粉測定と日々の症状を把握するための記録帳(アレルギー日記)を考案して、プロトコールも新たに考案して、それらを用いて、依頼された薬剤の評価をしました。そのため、最初のお話から、成績が出るまで、3年もの時間を費やしました。しかし、その後この方法が試験法として、標準的となり、今日まで続いていることは喜ばしい限りです。