2024年1月15日-4 花粉情報

本邦における花粉観測の歴史について、少し触れたいと思います。

世界では、20世紀初頭に、L.フォン・ポスト博士(スウェーデン)が花粉分析手法を開拓、Gエルドマン博士らが花粉形態に注目する植物学的研究を行ないました。日本では故幾瀬マサ氏が花粉や空中に浮遊する物質が引き起こすアレルギーに着目し研究を続け、これらをまとめて『日本植物の花粉』 (廣川書店 1956)を刊行 。本書の顕微鏡下での花粉のスケッチは芸術的。以後、半世紀以上その輝きが失われていない名著でした。

1967年より佐橋 紀男氏(東邦医大名誉教授・日本花粉学会理事)が生薬学教室において幾瀬マサ教授に師事。以後、現在も花粉観測の第一人者として活躍中です。

さて、実地臨床において、飛散花粉の実態は極めて重要であり、治療上役立つだけでなく、治療薬選択の決め手となるにも関わらず、花粉観測は医療保険の適応もなく、医療現場で測定され、十分活用されているかといえば、残念ながらほとんど活用されていない実情にあります。このことは、花粉症の医療が適切に行えず、莫大な医療費の浪費を生んでいると考えられます。1日も早い、システミックな花粉観測体制の構築および保険適応が望まれるところです。